2017/08/18

偉大な経営者の条件

今日の記事は99%前置きですので結果だけ見たい方は最後の3行だけご覧ください。


私はヴェルナー・フォン・ブラウンという人物を最も偉大だと思っています。フォン・ブラウンは1912年ドイツ生まれのロケット工学者で、のちにアメリカへ渡り、アポロ計画の月ロケットを作った人物です。

フォン・ブラウンはロケット工学の先駆者ヘルマン・オーベルトの著した論文『惑星間宇宙へのロケット』を読み、月に行きたい、という強い想いを抱きました。
まだ飛行機も初歩的なものがやっと出てきた時代に本気で月に行きたいと思う事はキチガイ同然ですが、フォン・ブラウンにはそんなの関係ありません。彼は純粋に月に行きたい、と思ってしまったのです。

そこでフォン・ブラウン青年はオーベルト自身が設立した「宇宙旅行協会」の門を叩きました。

そこでフォン・ブラウンはロケット開発に携わり、小さな初歩的なロケットを開発、開発したロケットを有料公開試射して研究費を捻出していました。

しかしロケット開発には莫大な資金が必要です。こんな一般人向けに見せ物ロケットなどを打ち上げていても、そんな資金など作れるはずもありません。

時代は戦争へと突き進んでいた当時、フォン・ブラウンはオーベルトと決別し、ナチスのミサイル開発に参加する決断をします。
当然、兵器を開発するとなれば自分が作った物で人が死ぬのはわかっていても、彼にとっては月に行くためには止むを得ない選択でした。

こうしてより本格的なロケット開発のフィールドと資金を得た彼ですが、その開発は失敗の連続でヒトラーからの信頼を失い、予算削減のピンチに陥ります。
そこでフォン・ブラウンはヒトラーにロケットの開発成功を約束し、人材と資金を調達しました。

フォン・ブラウンが普通の科学者と大きく違う点はここで、自分の野望のためなら自ら資金と人材を集める経営者的な才能を併せ持つ事です。
なんせ彼の夢は月にいくことなのです。彼にとってはヒトラーでさえ自分の野望を実現するための単なる道具であり、利用できるものは何でも利用する老獪さも持っていました。

そしてついにフォン・ブラウンはV2ミサイルを完成させます。その記録映画を見たヒトラーは感動で言葉もありませんでした。このV2に開発中の原爆を載せれば、もはや地上に敵は無くなるからです。この時点でフォン・ブラウンは地球上で最も月に近い男でした。

V2は即座に量産化されてロンドンに向けて発射され、イギリス国民を恐怖のどん底に叩き落としました。

しかしすでにその時、戦局は完全にドイツ不利となっており、V2をもってしてもこれを逆転させるには至りませんでした。ドイツの原爆開発が遅れていたためです。さらに敗色濃厚になったナチスは敗走の際に秘密基地を破壊し研究者を皆殺しにしていました。

それを察知したフォン・ブラウンは、V2の技術と部品をもって脱走し、アメリカへ亡命する計画を立てます。なんせ彼の目標は月に行くことなのです。こんなところで死ぬわけにはいかないのです。

そしてある夜脱出計画を決行しますが、途中でナチスに逮捕され、フォン・ブラウンは絶対絶命のピンチに陥ります。
しかし収容所が連合国側の爆撃を受けたドサクサに紛れてフォン・ブラウンは仲間の研究者と脱出。ある研究者はソ連の捕虜になり、フォン・ブラウンは九死に一生を得て国境までの逃走に成功。アメリカへと渡りました。

こうして命からがら新天地へと渡ったフォン・ブラウンですが、そこに夢を実現する明るい未来はありませんでした。

アメリカはフォン・ブラウンのロケットについて冷遇したのです。
これはフォン・ブラウンがドイツ人であったことに加え、当時アメリカは世界唯一の核保有国であり、軍事的に圧倒的優位だったためです。

こうしてフォン・ブラウンが月に行くための貴重は研究時間は浪費され、その間にソ連では元研究仲間たちによるロケット開発が進んで行きました。
そしてソ連は程なくして核実験に成功しアメリカに追い付き、さらに人類初の人工衛星の打ち上げにも成功しアメリカを追い越しました。
これはアメリカ全土がソ連の核ミサイルの射程に入ったことを意味します。

この事態に慌てたアメリカは、ようやく本気でロケット開発に着手しますが失敗が連続しました。
メンツ丸潰れとなったアメリカは、ついにフォン・ブラウンに国の威信をかけたアメリカ初の人工衛星の開発を託し、フォン・ブラウンは見事にそれを成功させました。

しかし、今度はすぐにソ連は有人宇宙飛行を成功させ、世界に常にアメリカの一歩先を行っていることを証明します。

もはや完全に自信を失った当時のアメリカの大統領であったケネデイはフォン・ブラウンを呼び出し、アメリカが月に人類を送る事が可能かと聞きます。
もうアメリカの威信を回復するには、人類を月に送ると言う相手のいないレースに出てそれに成功させる事しか残されていなかったのです。

フォン・ブラウンはケネデイに成功を約束し、ケネデイの有名な演説により有人宇宙飛行計画(アポロ計画)が始動しました。

フォン・ブラウンはついに自分の夢を実現するステージを手に入れたのです。
結果的にフォン・ブラウンはアメリカ大統領までもを自分の野望の実現の道具にしたことになります

ケネデイの演説後8年以上の歳月と10兆円以上の費用をかけ1969年、ついに人類は月に降り立ちました。

加齢のためフォン・ブラウン自身が月に行くことは叶いませんでしたが、彼が少年時代に抱いた夢は実現したと言えるでしょう。


このように、偉業を成し遂げる人物に必要な能力は、夢を実現したいという純粋な思いを数十年も持ち続ける一方で、その実現のためには何でも利用する老獪さを併せ持つ事と私は思っています。



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