2015/02/17

20世紀のインデックス投資

「スノーボール ウォーレン・バフェット伝(下)」を読んでいたら興味深い段落がありました。

…それでも、効率的市場論者はあらゆる例外を否定する。その際だった例外がバフェットで、その実績が長期にわたって賞賛を浴びているのは不都合な事実だった…(略)…ランダムウォーク論者が、バフェットという謎について議論した…(略)…プリンストン大学の経済学者であるバートン・マルキールが、株式市場で一貫して平均以上の結果を出している人間は、ツキのあるサルが≪ウォール・ストリート・ジャーナル≫の相場欄にダーツを投げて選んだ株で連勝しているのと大差ないといって、この議論を締めくくった。(P193~)


これに対するバフェットの反論は以下です。


その通りかもしれないが、コイントスで勝つ人々が全員おなじ町の出身だとすれば、表の連続はランダムではないかもしれない(P196)


「全員おなじ町の出身」というのはバフェットと長年にわたって株について議論してきた仲間たちのことです。この「バフェット・グループ」のポートフォリオはそれぞれに違いますが、20年以上にわたってバフェット・グループの面々は市場平均を上回り続けていました。

この事実をバフェットは提示し、このような集中はランダムな幸運によるものではない、と統計的に証明しました。ランダム・ウォークは統計に基づく理論ですが、その統計に基づいて検証するとランダム・ウォーク理論は反証されるというわけです。

この議論があったのは今から30年以上も前の1984年ですが、この論点はまさに、私も長いこと疑問に思っていた事でした。

それで、この論点に対するさらなるバートン・マルキール側の反論を知りたいと思い、その後に出版された版のバートン・マルキールの超有名著書「ウォール街のランダム・ウォーカー」を、この論点に注意しながらを読んだ事があったのですが、バートン・マルキールからの反論は見当たりませんでした。

というわけで、この論点はバートン・マルキールに「既読スルー」された状態となっていますので、仕方ないので自分でその後30年の経過を検証してみました。




Yahoo financeより転載


青がバフェットのその後の成績、赤がS&P500です。
結果を見ると、バフェットは毎年コイントスで表を出し続けたわけではないものの、明らかにその確率は50%を長期的に上回っています。その期間は20年+30年で50年以上に及びます。

バフェットは1984年に「その通りかもしれないが」とD.カーネギー流に控えめな反論をしましたが、結果はむしろ「その通りでは全く無かった」と言えるでしょう。

2015/02/10

株主優待の昔話 7524:マルシェ

今日は私が昔持っていた 7524:マルシェという優待株の話をしたいと思います。

マルシェは複数の居酒屋ブランドを展開する企業です。

私は昔、その中の「八剣伝」という店の「ガーリックポテトフライ」というメニューが大好きで足しげく通っておりました。

マルシェのタグライン(←カルピスでいう「カラダにピース」みたいなキャッチフレーズね)は「心の診療所」です。多分、仕事でストレスフルになったサラリーマンの息抜きの場にしたい、という願いが込められているんでしょうが、行くたびに「ここは心療内科かよ」という一人ツッコミをせずにはいられませんでした。


そんなある日、いつも通りガーリックポテトを食べながら、どうせ通うなら株を買って優待で戴こうと思いつき、1単位購入することにしたのです。
購入後は行っては優待券で支払う、という楽園生活を満喫しました。

株主総会にも出かけました。社長の質疑応答がまるで体育会系の先輩と後輩のようなやりとりで、失礼ながら「なんか頭悪そうな社長だなぁ」と感じたのを覚えています。

その後も変わらず通っていたのですが、ある日問題が発生しました。なんと体重が10kgも増えていたのです!!これはまずいっ・・・!と思った矢先、行きつけの店も閉店することを知りました。

それで、ちょうどいい機会だし株を処分して以後行くのはやめたのです。
すると体重のほうも落ち着きました。


それからマルシェのことはすっかり忘れていたのですが、ある日株式ニュースを見ていたらマルシェの記事が出ていました。目に飛び込んできたのはよりによって

「マルシェ(7524) MSCBを発行」

というヘッドラインでした・・・・・。

あ、あぶね~。やっぱりあの社長やりやがった・・・。
マルシェの財務指標上、そんなものを発行する必要は全くなかったので多分、幹事証券にたぶらかされたんだろうけど、脳ミソ筋肉で出来てそうだったし、やりかねん・・・。


こんなことがあったので、私は基本的に優待株とは遊び程度に付き合うことにしています。

2015/02/08

MSCBは死亡フラグ




MSCBと聞いてピンとくる方は、そこそこ株歴が長い人だと思います。2005年にライブドアがニッポン放送を買収するために発行したことで一躍有名になりました。

MSCB は Moving Strike Convertible Bond の略で、日本語では「転換価格修正条項付転換社債あるいは下方修正条項付転換社債」という長ったらしい名前がついています。

読むだけでは分かりづらいので思いっきりカンタンに言い換えると「発行企業=死亡フラグON」と覚えて頂ければOKです。MSCB は海外では通称 death spiral bond と言われているほどです。

MSCB がなぜ死亡フラグなのかと言うと、一般にこれを発行する企業は、銀行から借入することも普通社債を発行することも、株を公募することも出来ない事情があって、最後の最後に残った資金調達方法だからです。

そんな死に体企業が最後に可能な資金調達とはどんなものか、そのスキームをライブドアの事例で見てみましょう。

事例概略
  • ライブドアが総額800億円の MSCB を発行しリーマン・ブラザーズが引受ける
  • 転換価額は直近のVWAP(加重平均価格)の90%に修正する
  • 堀江社長がリーマン・ブラザーズに自らの保有株を貸す

さあ、リーマンはこの MSCB を引き受けました。これでリーマンはノーリスクで引受け価額の10%以上を短期間で儲けることができるのです。そのスキームの基本はこうです。


堀江社長から借りた株を市場でドカドカ売る

株価が暴落する

暴落した株価から10%ディスカウントした価格で社債を株に転換

転換した株を堀江社長に返して、ほなサイナラ

市場にはライブドア既存株主の死体の山が残される



という具合です。実際にはこれを繰り返し行うのですが、要はMSCBは引受けた投資銀行が100%巨万の利を得て、既存株主が100%損失を被ることになるのです。

既存株主は株価の暴落と希薄化で市場の生贄と化すものの、投資銀行は100%儲かるので死に体企業でも金を貸すというわけです。

当然、これは「企業は株主利益を優先するべきである」という原則の真逆を行くものですので、一度でもこれをやった企業は市場からの信頼を永久に失います。したがって、死亡フラグONとなるのです。仮にその後市場に残っていたとしても、2度と近づかないことをお勧めします。


それにしてもその後、発行したライブドアのみならず、引受けたリーマンも市場から姿を消す結果となったのは興味深いですね。

2015/02/04

PER30倍は割高ではありません。

いわゆる安定期に入った企業のPERは、大体15倍くらいになります。
なんでこうなるのかというと、投資家は株に年率7%くらいの利益を期待するからです。
すると、1÷7%=14.29となって、PERは大体15倍となるのです。

さらに、なんで投資家は株に7%を期待するのかと言うと、過去数十年の平均がそのくらいだからです。
従って株の割高・割安を考える場合、この15倍がベースになります。


さて、基本はこうなのですが実はここからが株の奥の深いところです。

例えばPER30倍の株があったとします。株の初心者はこれを割高と判断するかもしれません。しかしたいていの場合、これはフェアバリューなのです。基本PERは15倍なのに、30倍でフェアバリューとはなぜか?

実は、市場というものは通常、3年後の企業の姿に対して株価をつけるのです。例えば先のPER30倍の企業が年率25%で成長しているとすると、3年後の利益は1×1.25^3で1.95になります。
すると、1.95÷7%≒28となって、適正PERは28倍となり「このくらいの値段でいいじゃない」となるのです。

ところがここで、この企業が四半期決算を発表し「来期の増益率は15%になりそうだ」とアナウンスしたらどうなるでしょう?
株の初心者でありがちな間違いは「今回も増益だ。順調に成長してるな」と思ってしまうことです。

この場合、決算を聞いてプロは「えっ!?」と思い、株は暴落します。何故なら25%成長を前提とした株価だったのに、急に15%になったら3年後の利益は1×1.15^3で1.52になります。すると適正なPERは1.52÷7%≒21倍となり、3割は暴落してもらわないと釣り合わないからです。


さて、話はここで終わりません。さらに株の奥深さは続きます。

ここまでは「市場というものは通常3年後の企業の姿に対して値付けする」という前提での話でしたが、実はこの「3年後」も変数なのです。

すなわち、市場がバブル化している時は5年後にも6年後にもなり、リーマンショックのようなことが起きると、1年後さえ信用できなくなるのです。

従って、リーマンショックのような時しか、低リスクで成長株を手に入れることは出来ません。
逆にいうと、 リーマンショックのような時は成長株をガッツリと買うべきです。
これは短期的にはみるみる資産が減っていきますので、実際にやるとかなり怖いですが、絶対に正しいという信念で乗り切りましょう。

一方、いわゆる通常時にチャラい成長株を買うのはトレーディングとしては正解ですが、長期的な投資としては高リスクとなります。
特にバブル時に高PERの株を買うことは非常に危険です。歴史に学べばそういう株で97%下落したものもあります。

というわけで私はウォッチ銘柄のうち、高PERのものは、嵐の時にガッツリ買いたいので、常にキャッシュポジを一定以上に保っています

「高いなら、死ぬまで待とう、成長株。」が私の投資のアイデアで、通常時には高PERの株には手を出さないようにしています。

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2015/02/02

思い出の懺悔銘柄:2229カルビー



私は投資でよく失敗します。色々と失敗しました。

今日はそんな中から2229カルビーを取り上げてみたいと思います。
カルビーから得た教訓は「自分がファンであり、割高でない株を買うのは良いアイデア」だという事です。


カルビーが上場したのは2011年でした。
私はその当時「堅あげポテト」の大ファンで毎日のように購入していましたし「コンソメパンチ」という何故か真似されない魔法のコンソメパウダーを使用したヒット商品も以前よりありました。

その流れでカルビーに興味を持ち、上場時に有価証券報告書を読んだのですが、その感想は「これはドメスティックな会社だな」というものでした。
原料であるジャガイモは国内産のものしか使用できず、市場も国内メインで、あまり成長性を感じられなかったからです。

上場後の株価イメージとしては日本マクドナルドを連想しました。日本マクドナルドの上場タイミングは既に国内に店舗が飽和した時期で、それまでの高成長は期待できない時期でした。

そういう時期に上場する企業の目的はズバリ「出口戦略」です。本来、株を上場する目的は市場から調達した資金で成長を加速させることですが、中には「上場ゴール」といって、市場から資金を巻き上げて利益確定するのが目的の企業もあります。

カルビーのイメージはそこまで悪くは無かったものの、それに近いものがありました。なんでいまさら上場すんの!?という感じです。

ところがその後カルビーは世界的なスナック菓子メーカーである「フリトレー」の親会社「ペプシコ」との提携関係を利用して北米へ大展開。
中国へは台湾系で本土で食品大手である「康師傳(カンシーフ)」と提携して市場展開を加速。決して派手ではないですが順調な成長を遂げています。

その結果、上場時のカルビーのPERは16倍くらいだったと記憶していますが、成長性が織り込まれた現在のPERは40倍を超えています。

これは典型的なテンバガー(株価10倍)コースです。

すなわち、安定企業のPERは大抵13~15倍くらいがストライクゾーンですが、PERは成長を織り込むと30~40倍に跳ね上がります。すると利益は何も変わらなくても株価は2~3倍になります。そして利益が3倍になると、3×3で株価は9倍になるのです。

上場時のカルビーのPERが16倍くらいだったということは、市場のみんなは私と同じようにカルビーの成長性を見くびっていたことになります。


このように自分がファンであり割高でない株を買うというの十分にアリな戦略だと思います。

なぜならファンということはアップサイドは自分自身が信じている訳で、割高でないことはダウンサイドは限られているからです。

カルビーの株価は上場から一貫して上がり続け、現在は初値の6倍以上になっています。

P.S
その後、カルビー躍進の謎が解けました。上場ちょっと前にCEOになったのは、なんとあのJNJから来た人だったそうです。そりゃあ成長するわ。